パワハラ退職届の例文を状況別に紹介|書き方・提出方法・失業保険まで徹底解説
上司からの暴言、人格を否定する叱責、執拗な嫌がらせ。パワハラが原因で退職を決意しても、「退職届には何と書けばよいのか」「会社にパワハラを指摘すべきか」「退職理由を一身上の都合と書くと失業保険で不利になるのか」と迷う人は少なくありません。
2026年10月時点で、パワハラを理由に退職する際は、退職届の書き方だけでなく、退職の意思を伝えた記録、ハラスメントの証拠、離職票に記載される退職理由まで考えて手続きを進めることが大切です。厚生労働省の公表資料では、パワハラを受けて離職した場合、一定の要件を満たせば雇用保険上の特定受給資格者に該当する可能性があると説明されています。
この記事では、すぐに使えるパワハラ退職届の例文を状況別に紹介し、退職理由の伝え方、退職届と退職願の違い、会社が受け取らない場合の対応、証拠の集め方、相談窓口、退職後の失業保険まで実務に沿って解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:退職届は「一身上の都合により」と簡潔に書く方法がある。パワハラの詳細は別の書面やメールで記録に残せる。
- 要点2:退職届を受け取ってもらえない場合は、提出の証拠を残す。無期雇用と有期雇用では退職のルールが異なる。
- 要点3:パワハラの証拠は日時・発言・メール・録音・診断書などを整理し、失業保険の手続きではハローワークに事情を説明する。
【まず確認】パワハラ退職届には何を書く?「一身上の都合」でもよい理由
パワハラが原因で退職する場合でも、退職届に必ずハラスメントの具体的な内容を書かなければならないわけではありません。手続きを簡潔に進めたいのであれば、「一身上の都合により」と記載する方法があります。
ただし、退職届を簡潔にすることと、パワハラが原因で退職した事実を記録に残すことは別の問題です。将来、会社との紛争や雇用保険の離職理由の確認が生じる可能性を考え、必要に応じて人事部門などに別の書面で退職に至った経緯を伝えましょう。
退職届の基本例文
退職届
私儀、このたび一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします。
令和○年○月○日
所属:○○部○○課
氏名:○○ ○○
株式会社○○
代表取締役 ○○ ○○ 殿
日付、所属、氏名、提出先は自分の勤務先に合わせて記入します。会社指定の書式がある場合は、就業規則や社内の退職手続きも確認してください。
ここで押さえておきたいのは、退職届の文面だけで、雇用保険上の離職理由が最終決定されるわけではないという点です。厚生労働省の「雇用保険の基本手当」に関する案内では、パワハラを受けて離職した場合、本人の説明と証拠書類、事業主側の説明などを確認してハローワークが離職理由を判断するとされています。
したがって、退職届を「一身上の都合」とした場合でも、パワハラの記録を保管し、離職票の内容に異議があるときはハローワークに事情を説明できます。

【状況別の例文】パワハラ退職理由の伝え方と書き方
パワハラ退職届の例文は、退職の意思を伝える相手や、会社との関係、証拠を残す必要性によって使い分けると実務的です。以下の例文は、日付や所属などを自分の状況に合わせて修正して使用してください。
例文1:会社との対立をできるだけ避けて退職したい場合
退職届
私儀、一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします。
令和○年○月○日
氏名:○○ ○○
株式会社○○ 代表取締役 ○○ ○○ 殿
この形式は、退職届に詳細な事情を書きたくない場合に適しています。パワハラについて会社に説明する予定があるなら、退職届とは別に、具体的な経緯をまとめた文書を用意しておくとよいでしょう。
例文2:パワハラが退職の原因であることを会社に伝えたい場合
退職届自体は簡潔にし、別途、人事部門などに提出する書面で次のように伝える方法があります。
「私は、上司による継続的な暴言および人格を否定する発言などにより、安心して勤務を継続することが困難となったため、令和○年○月○日をもって退職することを申し出ます。これまでの経緯については、別紙に記載したとおりです。退職に関する手続きおよび必要書類の交付について、ご対応をお願いいたします。」
別紙には、発生した日付、場所、具体的な発言や行為、会社に相談した経緯などを記載します。「ひどい扱いを受けた」といった評価だけでなく、何が起きたのかを具体的に記すことがポイントです。
例文3:心身の不調があり、勤務の継続が難しい場合
「上司による継続的な叱責や嫌がらせなどを受け、心身の不調が生じているため、勤務の継続が困難な状況です。退職の手続きについて、書面またはメールでご案内いただきますようお願いいたします。」
この文面は、退職に関する連絡を記録に残したい場合にも活用できます。体調不良が深刻なときは、退職手続きよりも先に医療機関への相談や休養を優先してください。診断書などがある場合は、必要に応じて保管しておきましょう。
例文4:会社にパワハラの調査や再発防止も求めたい場合
「退職に至った背景として、職場での継続的な嫌がらせや不適切な言動がありました。事実関係の確認および再発防止に向けた対応をお願いいたします。具体的な経緯については、別紙にてお伝えします。」
この例文は、単に退職するだけでなく、会社に事実確認を求めたい場合に適しています。会社への申告が難しい場合や、関係者との接触による負担が大きい場合は、先に外部の労働相談窓口へ相談する方法もあります。
退職理由を口頭で聞かれたときの伝え方
上司に詳しい説明を求められても、その場で長時間の話し合いに応じる必要はありません。「職場での言動により勤務の継続が難しいと判断しました。詳しい経緯は書面でお伝えします」と伝え、記録の残る方法に切り替えることもできます。
退職の理由を詳しく話すことに不安があるなら、説明する内容を事前に整理しておきましょう。退職届にすべてを書き込むより、退職の意思表示とパワハラに関する申告を分けたほうが、目的を明確にしやすくなります。
【退職届と退職願の違い】提出方法と受け取ってもらえない場合の対処法
退職届を提出する前に確認したいのが、退職届と退職願の違いです。両者は似ていますが、一般的には意思表示の性質が異なります。
| 項目 | 退職届 | 退職願 |
|---|---|---|
| 一般的な意味 | 退職する意思を伝える書面 | 退職を認めてもらうよう申し出る書面 |
| 文面の例 | 「退職いたします」 | 「退職いたしたく、お願い申し上げます」 |
| 主な使い方 | 退職の意思を明確に伝えたい場合 | 会社との合意による退職を希望する場合 |
| 注意点 | 提出後は撤回が難しくなる場合がある | 会社の承諾前後で法的な扱いが変わる場合がある |
ただし、書類の名称だけで法的な性質が一律に決まるわけではありません。実際にどのような意思を伝えたのか、会社がどのように対応したのかなど、具体的な事情によって判断されます。
退職届の提出方法
会社との関係に大きな問題がなければ、直属の上司や人事部門など、社内規定で指定された相手に提出します。パワハラをしている上司本人に渡すことが精神的な負担になる場合は、人事部門や上位の管理者など、別の提出先を検討してください。
提出するときは、退職届の控えを作成し、提出日と提出先を記録しておきます。受領印をもらえるなら控えに押印してもらう方法もあります。メールで連絡する場合は、送信日時や送信先、送信内容が確認できる状態で保管しましょう。
退職届を受け取ってもらえない場合
上司が受領を拒否した場合は、まず拒否された日時や相手、やり取りの内容を記録します。会社の正式な所在地や適切な宛先を確認したうえで、内容証明郵便や配達証明を利用して送付する方法もあります。
内容証明郵便は、どのような文書を送ったかを郵便局が証明する仕組みです。配達証明は、配達された事実を確認するために利用できます。ただし、郵便を送っただけで、退職に関するすべての法的問題が解決するわけではありません。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」では、期間の定めのない雇用契約について、原則として退職の申し入れから2週間が経過すると労働契約が終了すると説明されています。一方、有期雇用契約では期間途中の退職に別のルールが適用されます。契約内容や就業規則、退職に至った事情によっても対応が変わるため、不安があれば労働相談窓口などに確認してください。
退職届を出す際の注意点
- 退職日と退職の申し入れ日を混同しない。
- 提出前に控えを作り、提出した証拠を残す。
- 会社から示された退職合意書などは、内容を理解する前に署名しない。
- パワハラの事実を記録したメールや資料を、退職届と一緒に不用意に手放さない。
- 有期雇用、休職中、長期欠勤中など、通常と異なる事情がある場合は個別に相談する。
なお、退職届を出したその日から必ず退職できるわけではありません。即日退職を希望する場合は、会社との合意や契約内容、健康状態などを踏まえて手続きを検討する必要があります。

【証拠の集め方】退職前に残しておきたい記録と保存方法
パワハラを受けて退職する場合、証拠は会社への申告だけでなく、労働相談、雇用保険の離職理由の確認、場合によっては法的な紛争への対応にも役立ちます。退職を急いでいるときも、可能な範囲で記録を整理しておくと安心です。
1.日時・場所・具体的な言動を記録する
いつ、どこで、誰から、何をされたのかを、できるだけ出来事に近い時点で記録します。「毎日怒鳴られる」だけでなく、「○月○日、会議室で、上司から業務内容と関係のない人格否定の発言を受けた」というように、具体的に書くことが大切です。周囲にいた人や、その後の業務への影響も記録しておきます。
2.メールやチャット、業務指示を保存する
暴言や不当な指示が記載されたメール、社内チャット、業務連絡、配置転換に関する通知などは、経緯を説明する材料になり得ます。保存する際は、送信者、日時、前後のやり取りなど、文脈が分かる形にしてください。会社の機密情報や他人の個人情報を不必要に持ち出さないよう注意も必要です。
3.録音や着信履歴などを保管する
暴言の録音、留守番電話、着信履歴なども、状況によっては事実関係の確認に役立ちます。ただし、録音や資料の取得・利用については状況ごとに法的な問題が生じる可能性があります。第三者のアカウントへの無断アクセスなどは避け、取得した資料の扱いに迷う場合は専門家へ相談しましょう。
4.診断書や相談記録を保管する
パワハラによって心身の不調が生じた場合は、医療機関への受診記録や診断書、社内窓口への相談メール、家族や同僚に相談した記録などを保管します。厚生労働省の労働紛争に関する資料でも、日記・メモ、メール、録音、関係者の供述、診断書などが具体的な資料の例として挙げられています。
証拠は会社の端末だけに置かない
退職後に社内アカウントへアクセスできなくなる可能性を考え、適法に保管できる資料は自分で管理できる安全な場所に整理しておきましょう。資料の一覧を作り、原本の保管場所、取得日、内容を記録すると、相談時に説明しやすくなります。
【相談窓口と即日退職】会社に頼れないときの選択肢
パワハラを受けている場合、会社の相談窓口だけが解決手段ではありません。加害者が直属の上司である場合や、社内で相談しても対応されない場合は、社外の相談機関を利用できます。
総合労働相談コーナー
厚生労働省が案内する総合労働相談コーナーでは、解雇、労働条件、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど、幅広い労働問題について相談できます。相談は無料で、電話または面談で受け付けています。予約不要の窓口もありますが、相談時間や受付方法は地域によって異なります。
状況に応じて、労働局による助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんなどの制度を案内してもらえる場合もあります。法律違反の疑いがある問題については、労働基準監督署など適切な担当機関を案内されることもあります。
都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
パワハラについて会社が適切に対応しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)も相談先の候補です。厚生労働省は、職場のパワハラ防止のために事業主が必要な措置を講じることを求めており、中小企業も含めて2022年4月から義務化されています。
退職代行を利用する場合
上司との直接のやり取りが難しい場合は、退職代行サービスを利用する選択肢もあります。ただし、サービスによって対応できる範囲が異なります。退職の意思を伝えることと、未払い賃金の請求や損害賠償への対応などを会社と交渉することは同じではありません。
金銭請求や法的な交渉まで必要な場合は、弁護士への相談を検討してください。労働組合が運営するサービスについても、団体の実態や交渉対応の範囲を確認してから選ぶことが大切です。料金だけでなく、退職後の書類の受け取りや会社との連絡にどこまで対応してもらえるかも確認しましょう。
パワハラによる即日退職は可能?
即日退職が必ず認められるわけではありません。期間の定めのない雇用契約では、原則として退職の申し入れから2週間で契約が終了するというルールがありますが、会社と合意できれば、それより早い日程で退職できる場合があります。有期雇用契約では、期間途中の退職に関する別のルールにも注意が必要です。
心身の不調が強く、出勤そのものが難しい場合は、退職日を決めることだけにこだわらず、医療機関への相談や休暇の取得、会社への連絡方法の変更なども検討してください。安全を確保できない状況では、無理に加害者と直接交渉する必要はありません。

【パワハラ退職後の失業保険】離職理由と給付制限の確認ポイント
パワハラによって退職した場合、失業保険を受給できるかどうか、給付制限が適用されるかどうかは重要な問題です。退職届にどのような文言を使ったかだけでなく、実際の離職理由や雇用保険の加入状況などが関係します。
パワハラ退職が特定受給資格者に該当する可能性
厚生労働省の「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」では、上司や同僚などから故意に仲間外れにされたり、著しい冷遇や嫌がらせ、いじめ、暴言、暴力などを繰り返し受け、それが原因で離職した場合、特定受給資格者に該当するケースがあると説明されています。
ただし、上司から注意や叱責を受けたという事実だけで、必ず該当するわけではありません。ハローワークは、本人の主張、証拠書類、事業主側の説明などを確認したうえで、離職理由を判断します。
離職票の退職理由が実態と異なる場合
会社から届いた離職票に「自己都合退職」と記載されていても、実際にはパワハラが原因で退職したのであれば、ハローワークでその事情を説明してください。手元にあるメール、メモ、録音、診断書、会社への相談記録などを提出できるように整理しておきます。
会社が記載した離職理由に異議がある場合でも、会社側の説明だけで判断が確定するわけではありません。本人の説明と客観的な資料を踏まえ、ハローワークが確認・判断する仕組みです。
2026年の自己都合退職に関する給付制限
厚生労働省の案内によると、正当な理由のない自己都合退職については、2025年4月1日以降の離職では、原則として7日間の待期期間の後に1か月の給付制限があります。過去5年間に正当な理由のない自己都合退職を繰り返している場合などには、3か月の給付制限となることがあります。
一方、パワハラなどによる離職で特定受給資格者に該当する場合は、一般的な自己都合退職とは扱いが異なる可能性があります。実際の受給資格や給付日数は、雇用保険の加入期間、年齢、離職理由などによって変わります。
退職届に「一身上の都合」と書いたからといって、それだけで給付制限の有無が自動的に決まるわけではありません。離職票の内容を確認し、実際の退職理由を説明できる資料を用意して、ハローワークに相談することが大切です。
【プロの結論】退職届・証拠・離職理由を分けて考える
パワハラ退職で大切なのは、退職届にすべての事情を書き込むことではありません。退職の意思表示は簡潔にまとめ、パワハラの事実は具体的な記録として残し、雇用保険の手続きでは離職理由を正確に説明する。この3つを分けて考えることで、退職手続きとその後の生活に必要な準備を進めやすくなります。
会社との対立を避けたい場合は簡潔な退職届を使い、会社に事実確認を求めたい場合は別の書面を用意する。会社が受領を拒否した場合は提出の記録を残し、離職理由に疑問がある場合はハローワークや総合労働相談コーナーへ相談する。自分の目的に合わせて手段を選ぶことが、退職後のトラブルを防ぐための現実的な判断基準です。
【パワハラ退職届例文】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:パワハラが原因でも、退職届は「一身上の都合」でよいですか?
A1:はい、退職届を簡潔にするために「一身上の都合により」と記載する方法があります。ただし、パワハラが原因で退職したことを会社に伝えたい場合は、別の書面やメールで具体的な経緯を記録に残し、証拠も保管しておきましょう。
Q2:退職届を会社が受け取ってくれない場合、どうすればよいですか?
A2:受領を拒否された日時や経緯を記録し、内容証明郵便や配達証明を利用した送付などを検討してください。無期雇用と有期雇用では退職に関するルールが異なるため、契約内容に応じて総合労働相談コーナーなどに相談すると安心です。
Q3:パワハラで退職した場合、失業保険はすぐに受け取れますか?
A3:パワハラが原因で退職した場合、一定の要件を満たせば特定受給資格者に該当する可能性があります。ただし、受給資格や支給開始時期は個別の事情によって異なります。離職票の記載内容を確認し、パワハラの証拠を持参してハローワークに相談してください。
まとめ:無理のない退職手続きと退職後の生活を守るために
パワハラが原因で退職する際は、退職届の書き方だけでなく、提出方法、証拠の保管、離職理由の確認まで考えておくことが重要です。退職届は「一身上の都合により」と簡潔にまとめる方法があり、必要に応じてパワハラの経緯を別の書面で伝えることもできます。
会社が退職届を受け取らない場合は、提出の証拠を残し、雇用契約の種類に応じた対応を検討しましょう。パワハラの記録や診断書などは退職前に整理し、離職票の退職理由が実態と異なる場合はハローワークに説明してください。
会社とのやり取りが苦痛な場合や、自分だけで判断できない場合は、総合労働相談コーナー、都道府県労働局、弁護士などの外部の相談先を利用できます。無理に職場にとどまり続けることだけが解決策ではありません。心身の安全を優先しながら、必要な記録と手続きを一つずつ整えていきましょう。 (出典: パワハラ 退職 届 例文(Yahoo!ニュース))